アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #21 「Corpse Reviver No.2」
「………………」
ヘリに乗ってから、アルドロはずっと押し黙ったままだった。
ヘリの中には、アルドロを招き入れた白髪紅眼で黒コートの男、先ほど機関銃を掃射してきた茶色の癖毛の髪の男、ヘリの操縦をしている男、そしてアルドロの計4人が同乗している。
見たことも会ったこともない男ばかりだ。
まずナイツロードの車を襲撃してきた時点で、この者達がナイツロードの同僚や味方でないことは確かだ。
だが、だからと言って、ボンゴやアリーサと同じ憲兵というわけでもないらしい。完全なるアルドロの敵なら、アルドロをセントフィナスに連れて行く理由など、どこにもないハズだ。
では、この男達は一体何者なのだろうか。
色々な可能性を模索するアルドロだったが、所詮、一団員の知識では答えに辿り着けるわけもない。その上、アルドロは頭を使うということが大の苦手だ。
コンマ数秒で思考を停止したアルドロは、目の前の男から何か情報を得れないかと、コートの男に視線を向ける。
コートの男は無表情で腕組みをし、座席に腰掛けている。アルドロに搭乗を促してから彼は一言も喋っていないが、その存在感は他の二人の同乗者よりも遥かに大きかった。
……多分、この中でこいつが一番偉い奴に違いない。
続きを読むアンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #20 「Fallen Angel⑥」
意識を取り戻したアルドロを襲ったのは、エーカーの容赦ない拳だった。
顔面を殴られ再度意識を失いかけるアルドロを、エーカーは喉元を踏みつけることによって無理矢理叩き起こす。
「ゲっ……ガハッ……!」
エーカーの足を掴んで、満足に呼吸ができないことを表すアルドロ。しかしエーカーはその足を緩めるどころか、さらにキツく踏みつけ、状況を端的に説明した。
「オリガがユーリに連れ去られた。恐らく、目的地はセントフィナス王国だ。王女を民衆の前で殺害し、復讐を果たす算段だろう」
王女の身柄を敵に奪われる——今作戦において、考えうる中でも最悪の状況だ。あらかじめ計画した護衛ルートも完全に御破算。もはや彼らにできることと言えば、セントフィナスに到着するまで、ユーリがオリガを殺さないことを祈りつつ、彼らを追跡することだけである。
不意にアルドロを踏んづけていた足を離して、エーカーは無表情を崩さぬまま、冷厳に告げた。