A地帯

創作小説、ブロント語、その他雑記等。

2016-01-01から1年間の記事一覧

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #23 「Spritzer②」

「までゴラァ!」 王女を抱え、長い廊下を走り去ろうとするユーリを、エレクは追う。 エレクの持ち前の脚力なら簡単に追いつけるはずだが、ユーリが精製した鴉を薙ぎ払いながら追っているため、なかなか手が届かない。電撃射程内の距離に食い止まるのが精一…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #22 「Spritzer①」

ヘリから勢い良く飛び出したレジーは、全身に法力を展開して空中制御と衝撃吸収を同時に行ない、コンクリートの地面に難なく着地した。 瞬時に拳銃を構え、周りを確認する。空港の滑走路上に、不審な人影はない。 周囲が安全であることを確認したレジーは手…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #21 「Corpse Reviver No.2」

「………………」 ヘリに乗ってから、アルドロはずっと押し黙ったままだった。 ヘリの中には、アルドロを招き入れた白髪紅眼で黒コートの男、先ほど機関銃を掃射してきた茶色の癖毛の髪の男、ヘリの操縦をしている男、そしてアルドロの計4人が同乗している。 見た…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #20 「Fallen Angel⑥」

意識を取り戻したアルドロを襲ったのは、エーカーの容赦ない拳だった。 顔面を殴られ再度意識を失いかけるアルドロを、エーカーは喉元を踏みつけることによって無理矢理叩き起こす。「ゲっ……ガハッ……!」 エーカーの足を掴んで、満足に呼吸ができないことを…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #19 「Fallen Angel⑤」

「ありがとう、アルドロ君」 ユーリが口にしたのは、先ほどのダニイルが口にしたのと同じ、感謝の言葉。 しかしそれはアルドロの心を強制的に撫で付けるような、気味悪さと恐ろしさを帯びていた。「君たちナイツロードのおかげで危機は去った。いくら"ジェロ…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #18 「Fallen Angel④ (Angostura bitters mix)」

「そこです」 市街のホテルを出てから小一時間後、オリガの言う通りに進んだアルドロは、とある脇道の傍でバイクを停めた。 バイクを降りた二人が暫く道なりに進むと、川を臨む小さな空き地に出た。 ベンチはあるが、特に遊具と言ったものは無い、何の変哲も…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #17 「Fallen Angel③」

「クソッ! 一体どうなってやがる!?」 普段のおちゃらけた雰囲気を一切投げ捨て、怒りに口を任せてレジーは言葉を吐き出した。「部屋には争った形跡もありませんでした。敵の襲撃ではないとするなら……オリガさんとアルドロさんは自分からここを出て行った…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #16 「Fallen Angel②」

朝6時。 水平線から顔を出した朝日が、旧市街を照らす。 まだ朝早いからか、街の中心地に位置する広場には、人影はない。ただ美を讃える像の隣に、鳥が一羽、羽を休ませているようだった。 鳥の鳴き声が耳に入ったのか、眠りから意識を取り戻し、重い瞼を開…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #15 「Fallen Angel①」

「交代だぜ」 そう言って、オリガの眠る寝室に入って来たエーカー。 部屋の中には、ベッドに横たわっているオリガと、傍の椅子に座って見張りをしているレジーの姿があった。 むこうを向いて、スヤスヤと眠るオリガの様子を横目で見つつ、エーカーが尋ねる。…