A地帯

創作小説、ブロント語、その他雑記等。

2015-01-01から1年間の記事一覧

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #14 「Sex on the beach③」

「さてと、聞きたいことが山積みなんだ。嫌でも喋ってもらうからな」 気を取り直して、エーカーは拘束した女に近づき——と言っても相手の靴底が届かない距離までだが——淡々と告げる。「この私を尋問しようというのか。愚かにも程があるな、オッサン! 部隊時…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #13 「Sex on the beach②」

オリガが部屋を飛び出してから30分後、何やら壁を殴ったり蹴飛ばす音が、扉の向こう側から聞こえ始めた。 なんとなくオリガの真似をして外の景色をボーッと見ていたアルドロは、だるそうに頭を掻きながら、物音のした方向に向かう。 音の発生源、風呂場の前…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #12 「Sex on the beach①」

「やあーっと着いたぁ……」 部屋に入った瞬間、疲れを口から吐き出しつつ、ソファーにごろりと横たわるレジー。 夜9時を回り、目的地であるボルドーに到着したエーカー一行は、地下列車を降車し、そのまま線路の真上にある宿『シャトー・アンジュ』に泊まるこ…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #11 「Red Eye②」

セントフィナス王国の王族が踏み入ることを赦された領域、ロイヤルハウス。 その中でも東の庭園は、アレクセイ国王の弟であるダニイルが最も気に入っている場所の一つであり、この庭の手入れが彼の日課の一つである。池の魚のエサやりから芝刈りまで、一人で…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #10 「Red Eye①」

北大西洋。バミューダ諸島とプエルトリコのちょうど中間地点、バミューダトライアングルのちょうど入り口に、人口92000人の小さな島国が浮かんでいる。 それがセントフィナス王国だ。 かつては軍事拠点として利用されていたが、英国の手に渡った後、17年前に…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #9 「42nd street③」

列車の天井に着地したボンゴは、王女のいる車両に向けて駆け出した。 とはいっても、走行する車両の上だ。それほどスピードは出せない。それでも図体の大きいボンゴが走ったり車両間を飛び移ることができるのは、法力を使って体勢を安定させているからだった…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #8 「42nd street②」

エーカーとアルドロの関係を表すのに、『犬猿の仲』よりも適した言葉はないだろう。 同じ職場の傭兵なら必ずしも仲が良いという訳ではない。特にエーカーはその性格から周囲に訝しまれることは多いが、それにしてもこの2人の犬猿っぷりは度を越している。 要…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #7 「42nd street①」

「……もっとイカした格好は用意できなかったのか?」 レジーが身じろぎしながらボヤくのも最もだった。今現在、エーカー達一行は王女や執事まで、全員が薄汚れた作業服を着て、地下の車両基地へ向かっている。 どうやら、今時の若者を尽く体現したレジーとい…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #6「Czarine」

「オリガ・アレクセヴナです」 エーカー達を迎えたのは一人の少女……セントフィナス国王、アレクセイ・ヴァシリヴィチ・パヴロフの一人娘、オリガ・アレクセヴナ。国王が崩御した今、王女として、後継者候補の一人だ。 しかし余りにも王女とは思えない格好に…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #5「Tom and Jerry②」

「よーし、全員集まったか?」 フランス・パリの郊外、グランパレ・ロイヤルホテルの一室に、エーカー達一行は集まっていた。 このホテルの中で一番安い部屋だが、内装はそこそこ整っている。しかし、いかんせん男4人が集うと狭くなってしまう。 そんな狭さ…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #4「Tom and Jerry①」

傭兵団ナイツロード所属の義肢技術士、ロッテ・ブランケンハイムの工房は、お世辞にも綺麗だとは言い難い。 あらゆる機器が無造作に置かれた室内、ただでさえ狭い上に床に散乱した設計図やら図面やらの書類や工学系の雑誌は見事に足の踏み場を無くし、テーブ…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #3「Bloody Sam③」

ヘリがプラントに到着するや否や、レイド・アーヴァントはヘリから飛び降り、辺りを見渡した。 それほど広いプラントではない。元は海質調査用の比較的小さなプラントだ。 しかし、機械の駆動音どころか人っ子一人の声も聞こえてこない。耳に入ってくるのは…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #2「Bloody Sam②」

TMMI社社長室は、文字通り緊迫した雰囲気に包まれていた。 ナイツロードの使者、イリガル・エーカー、イクス・イグナイト。 二人を取り囲んでいるのは、アサルトライフルを構えたTMMI社の兵士達。 さらにはその兵士達に肩を並べて、TMMI社社長のローグまでも…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #1「Bloody Sam①」

民間軍事企業TMMI社の社長、ローグ・マーチェンは、自社の兵士に連れられて社長室に入って来たナイツロードの使者の顔を見た途端、困惑の表情を浮かべた。 これまで、ナイツロードとの交渉は何回かに渡って行われてきた。その時の相手は物腰も丁寧で誠実さを…

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #プロローグ

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予告という名を冠した何か

生きてます。そりゃあそうだ。

The twain Swords #1-epilogue

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The twain Swords #1-11

《1989/8/31 AM9:14 スイス WDO世界防衛機関本部》 赤毛の女性……もとい、世界防衛機関の総司令官、ラブ=ファイナスとの邂逅の後、未だ疲れの残るアルフォンソの様子を見たテンヌィスは、ひとまず彼を本部に一晩泊めてやることにした。 アルフォンソにはまだ…

The twain Swords #1-10

暗い海底から引き上げられる沈没船のように、アルフォンソはゆっくりと目を覚ました。 全身はほんのりと熱を持ち、餅のように柔らかいベッドが背中を包み込んでいる。天井から放たれる暖色の光は、再びアルフォンソを眠りの世界へ落そうとする。 ここがどこ…

The twain Swords #1-9

《1989/8/30 PM1:05 スイス WDO世界防衛機関本部》 「ん〜? 何だこのドア?」 しばらく進んだところで、金髪の記者はとある部屋の扉の前で立ち止まった。 彼が違和感を覚えるのも無理はない。他の部屋は全てガラス製の自動ドアだというのに、なぜか、この部…