アンジャスト・ナイツ #11 「Road Runner」
引っ越してから初の更新
携帯じゃチョー打ちにくい。パソコンはやくきて~はやくきて~
庸兵団ナイツロード所属、イリガル・エーカー団員の見た目は至って不健康である。
顔色は極めて悪く、頬も痩せこけ、目にはくっきりと隈。仲間内では「ヤクをやっていたに違いない」ともっぱらの噂だ。後ろで結わえたボサボサの黒い長髪や、シワだらけの年季の入ったジャンパーが更に不健康さに拍車をかけている。
決して不衛生というわけではないのだが、見た目が見た目なので近寄りがたい人物として認識されている感じだ。
だから彼の戦いぶりを見たアルドロは我が目を疑った。
流れるような身のこなし、間合いを保った剣さばき、スキのない回避。
彼の戦闘は丁寧で無駄が無い。粗暴な見た目からは想像できない戦い方だ。そのインテンシティーは戦闘する為だけに生まれた人造人間B-00量産型二体と互角にやり合っていることで証明されていた。
アルドロは思った。これが、才能の差なのだろうか、と。
自分だって努力はしている。けれど、明らかに努力していない同僚に手加減されて負ける。悔しくてもっと努力するが結果は同じだ。
経験が足りていないとも思った。もっと場数を踏めば自然と強くなるのではないかと。だが最初はみんな経験なんてものは無い。自分が経験不足だけで負けているとは思いがたい。
――結局のところ才能なんだろうな、と結論づけた。才能あって努力が報われるものだと。勿論受け入れることは出来ない。何故ならそれは自分がしてきた努力が全部無駄だという裏づけになってしまうから。
そう、初めから弱さを受け入れることなど自分には無理なのだ。
だったら。
「オレは……才能ねぇからよぉ……」
心の中で覚悟を決めながら、傷だらけの体に鞭打って立ち上がる。
「……突っ込むことしか知らねぇ!!」
剣を握り締め、激戦の渦中に飛び込んだ。
「ボウズ!?」
信じられない光景だった。俺と奴らの間に血だらけのガキが割って入ったのだ。
立ってるのもやっとな状態だってのは他人目に見ても分かるってのに、そんなもの根性で何とかなると言わんばかりに叫びながら敵に突っ込んでいきやがる。そのさまは理性を完全に消失した獣もいいとこだ。
人造人間共はアルドロの猛攻を難なく躱し、反撃の態勢に入った。仕方なく俺はアルドロの前に回り、敵の攻撃を受け止めてやる。
「いきなり騒ぐんじゃねぇよボウズ! 怪我人は大人しく床に伏せてろっ!」
「ルセェー! 邪魔すんな!」
「ぐお!?」
アルドロの野郎、フォローに回った俺の頭を踏んづけてまた敵の眼前に飛び出していきやがった。ここまでくると最早人間ではなく、銃弾かミサイルの類だろう、と思う。
間違いない。今こいつの頭の中には『恐怖』ってもんが微塵もないのだ。そうでなければ自分をギタギタにした敵に対してあれほどまでに攻めることはできない。痛めつけられた悔しさや怒りをぶつけることしか考えていないのだろう。
はっきり言って今のアルドロは戦闘をさせるにはふさわしくない状態だ。怒りで周りが見えなくなり、遮二無二突っ込んで死ぬなぞお決まりのパターンだ。
だが、真に遺憾ながら止まれといって止まるような奴には見えない。むしろさらに逆上するのがオチだろう。さらに周りは人造人間2体、こちらの事情など聞いてくれる訳もない。無理に押さえ込んだところを2人まとめて斬られた日にゃ成仏したくてもしきれないぞ。
次の手を思案してる間にもアルドロは怪我と疲労で立つのもやっとの状態、人造人間共がトドメを刺すのは時間の問題だ。どうする?
逡巡していた俺に光が差した。いや、正確に言うと光を『感じた』と言うべきか。所長室の天井の向こうから僅かだが確かに感じる光は、俺にとっては懐かしく、そして頼りになるもの。
「チッ……今更顔見せやがって、『お月様』よぉ!」
言うが早いか俺は懐から銃を取り出し、天井へ向かってありったけの弾を叩き込んでやった。
《B-00量産型残り7体》
======
挿し絵を入れて分かったこと
かっこよくて強そうなアルドロはかっこいいけどアルドロじゃない!
( T)<あ、アルドロとは一体……うごごご……