A地帯

創作小説、ブロント語、その他雑記等。

アンジャスト・ナイツ #6「Eye Opener」

遅れる(6ヵ月)

わ、わけがわからないよ…

とまあ震え声で更新


「……む」

異変に気づいたのはイクスだった。トラックで出発してから30分ほど、オレとデルタが雑談し、エーカーが居眠りを始めていた……ちょうどその時だ。

相変わらず凸凹道が俺達の体を上下に揺らす。

任務に参加する団員は4人…と言ったが、それは荷台の中にいる人数だ。もう一人、トラックを運転している奴がいて、そいつがオレらを目的地へ運ぶ……筈だった。

何かを感じ取ったイクスは急に立ち上がると、荷台の前方についている運転席が見える窓を開けた。

「!」

イクスが身じろぎしたのを見たオレ達2人――エーカーの奴は爆睡している――はすぐに小窓に目をやった。

運転手が殺されている。

詳しくは分からないが、フロントガラスが真っ赤に染まっているのだけは分かった。

誰が、どうやって。そんなことを考える間もなく、トラックは突如ありえない傾き方をした。

横転する。

「何かにつかまれっ!」

イクスが呼びかけたが、そんなことは言われなくても分かってる。視界が横に傾き、とてつもない振動がオレの体を襲ったが、イクスが気付いていたおかげで壁に叩きつけられるなんてことにはならなかった。

「どわーっ!!」

…エーカー以外は。

エーカーの奴はトラックが横転した衝撃でオレの頭上を吹っ飛んで、後ろの扉に顔面からぶつかった。一応ナイツロードの戦闘員なのだからあの程度で死にはしないとは思うが、今はそんなこと気にしている場合ではない。

トラックは横転したあと、しばらく猛スピードで地面を滑っていたが、木か何かにぶつかったのか、ズンという轟音とともに急停止した。

「み、みんな無事かい?」

「ああ、随分とハデな到着だな。」

デルタの質問にイクスが皮肉をこめて答える。と、その時、何かが扉を突き破って荷台の中に入ってきた。

「なっ!?」

入ってきた“ソレ”は人型だが、間違いなく人ではなかった。まず頭からして、脳が透けて見えている。体も銀色の光沢を帯びていて、近未来の殺人ロボそのものだ。

いや、こいつは本当に殺人ロボそのものだ。こいつが研究所から脱出した改造人間…

そんなことを考えていると、そいつの手が閃いたのを見て、オレは条件反射で身をかがめていた。

オレの頭があったところをナイフが矢のような速さで通り過ぎた。

「マジかっ……!?」

殺人ロボが次の行動をとろうとした瞬間、イクスは電光石火の如く懐から銃を抜き、目にも留まらぬ速さで殺人ロボの頭に向けて銃弾を見舞った。

3発の銃弾が全て、ロボの頭部を貫通した……だがロボは少しひるんだだけで、すぐにオレに向かって攻撃を再開した。

「じょ、冗談だろ!?」

向かってくる敵を目の前に、オレは完全に動揺していた。まぁ頭部に穴の開いて中身がさらけ出された姿で動き回られたら、そりゃ驚かないほうがおかしい。

さらに驚いたのは、今まさに激突しようとしているオレと殺人ロボの間についさっき顔面を打ってそこにのびてたはずのエーカーが割り込んできたことだ。

エーカーは何やら針のようなものをロボの頭部に勢いよく突きたてた。そのせいでヤツの頭部はさらに悲惨になったことは言うまでもないが、ロボは針を刺された瞬間、今までの激しい動きから嘘のようにピタッと動作停止してそのまま動かなくなってしまった。

「効果バツグン、だな」

エーカーは満足そうにそう呟くと、針をロボの頭から引っこ抜いた。

イマイチ事情が飲み込めない、そんなオレらを見て、エーカーはまるで友達を紹介するような口ぶりで説明した。

「こいつが、K国が開発した人造兵器、B‐00量産型。今回の任務のターゲットだ。見てもらったとおりこいつに通常兵器は意味を成さない。頭を撃とうが手足を切り落とそうが、動きは止められてもすぐに再生する。――これ以外はな」

そう言ってエーカーは傍においてある黒い箱を示した。中に注射針に似たようなものが数十本入っている。エーカーがトラックに搭乗する際、大事に持っていたものだ。

「そいつぁ……一体何なんだ?」

「えーお前に言ってもすぐに忘れちゃうだろう?ボウズよ」

「ぶっ殺すぞ!」

「まぁまぁ、たとえアルドロ君が忘れても僕が覚えてますから」

デルタはフォローのつもりで言ったんだろうが、オレが忘れることを前提としている時点でフォローになっていない気がする。

「続けるぜ? で、この注射器の中には奴らのAIを停止させるウイルスが入っている。これを使って今回の任務を遂行する。だが数に限りがあるから気をつけろ。これが無くなったら任務は失敗したと思え」

なんだ。もっとややこしいことだと身構えてたけど、思ったより簡単じゃん。

「つまりその注射針を他の奴らに全部ブッ刺せばいいって話だろ?」

「……まあ理屈はそうだ。が、注射器と言う特性上、相手にできる限り近づかなきゃならん」

「“あの”人造人間の懐に潜り込まなければならないってことか……銃型に改造して遠くから撃ち込む方法は無かったのか?」

イクスが不機嫌そうに尋ねた。確かに、少し面倒くさいことになりそうだ。

「すまないねぇ、時間がなかったのさ。……コイツの近くにいるのは嫌かい?」

エーカーは殺人ロボを示して言った。明らかに挑発だ。

「……フン。訊いてみただけだ。たださっきの身のこなし……お前も相当腕が立つようだな?」

「まーこのボウズに死なれちゃ困るしねー」

「な……!べ、別にお前が来なくてもオレは一人で何とか……!!」

「ハイソーデスカ。じゃ、言い訳も程ほどにしてさっさと行きましょうネー」

「待てやクソジジイ!!」

……今オレの絶対打倒ランキング2位にコイツがランクインしたことは言うまでもない。


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久しぶりの更新なので長く感じた。実際長いかも。


正直更新は亀スペです。あまり期待しないで待ってると吉。