A地帯

創作小説、ブロント語、その他雑記等。

アンジャスト・ナイツ #4「Angel Face」

とあるチャットで下ネタ言い合ってる間にこんなに更新が遅くなりました。

あと大体FF4DSを買ったせい。制御システム戦が鬼畜と聞いてたけど鬼畜でした。

とか何とか言ってる間に更新。




ナイツロード本部4階、居住区。廊下に並ぶ無数のドアは、団員一人一人の部屋に通じている。

その無限にあるようなドアの中から、俺は一人の団員の部屋の前で立ち止まった。

その団員のドアだけは他のドアに比べて少し薄暗く感じた。

俺はインターホンを押した。

返事は無い。

もう一回インターホンを押した。返事は無い。

もしかしたら中で死んでるんじゃないかと思い、俺は乱暴にドアを叩いて叫んだ。

「俺だ、エーカーだ、用がある、開けろ」

しばらくの静寂の後、カチャリという鍵の開けられた音が響き、また元通り静かになった。

ゆっくりとドアを開く。

部屋の中は荒れ放題だった。

ベットのシーツはめちゃくちゃで、床のそこら中にインスタント食品の袋が散乱している。

カーテンは閉まったまま。おまけに壁は傷だらけだ。

そんな部屋の真ん中で毛布に包まり、うずくまっている男がいた。

今にも掻き消えそうなほど存在感が無い。

「……何の用だ……?」

男は蚊の鳴くような声で俺に問いかけた。

男の名はデリブ。いわゆる運び屋で、その実力は高かった。

あの任務を受けるまでは。

その日デリブはいつものように荷物を配達した。

荷物の内容は、とある兵器の設計図だった。

デリブは何事もなく、荷物を依頼主に配達し終えた。

数週間後、デリブの故郷がその兵器によって木っ端微塵にされた。

彼は間接的に自分の故郷を滅ぼしたも同然だった。

それ以来、夢で彼の死んだ家族や友人が彼を責め立てるらしい。

デリブは自宅に引きこもり、毎晩の夢に震えているというわけだ。

……正直、バカバカしい。

この稼業をやるからには、例え自分の故郷を滅ぼす任務だろうが、親兄弟を消す任務だろうが

それを行う覚悟が要る。

こいつはその覚悟ができていなかったからこんなザマになった。それだけだ。

……まあ俺が同じ状況に立たされて正気を保っていられるかは微妙なところだ。

親や故郷のことなど……俺には想像もつかない。

こいつはさぞかしいい家族や友に囲まれて育ってきたんだろうな。

憧れや嫉妬がないといったら嘘にはなる。

だがそんなモノが無いからこそ、この業界でまともにやっていけるわけで。

「調子はどうだ?デリブ」

俺はとりあえず彼の様子を伺った。デリブとは任務の関係で面識がある。

その時の彼は調子のいい、冗談が好きな好青年であった。

どうやら相当参ってるらしい。

「……用が無いなら出て行け……出て行け……」

俺は回りこんで彼の顔色を伺った。

目は真っ黒で生気が無く、濃いクマができており、頬は痩せこけていた。

「まあそう邪険にすんなよ。いい話を持ってきたんだ」

俺がそう言うとデリブの奴は俺の方を振り返って――その目は恐ろしい化け物を見たような目だ――

座ったまま部屋の隅に後ずさりした。

「も、もう運びは御免だ!また……またあんなことがあったら……!」

デリブは滝のように涙を流しながら、ブンブンと首を横に振って懇願した。

全くしょうがない奴だ。

「そうか……」

仕方なく俺は部屋の隅にへたれこんでいるデリブの傍にゆっくり近づくと、彼の胸ぐらを掴んで持ち上げ、声音を低くして言った。

「……いつまでそうしているつもりだ?」

あまりにも急な事だったので、デリブの奴はまともに驚くこともできず、壁にはりつけられる格好となってただただ涙を流していた。

「ここは傭兵団だ。自分の仕事もできない奴に用はねぇ。お前もじきにここから追い出される事になるぞ。そしたらお前、どうやって生きていくつもりだ?」

「そ、それは……」

「今のお前のような無一文で泣いてばかりの野郎が社会に放り出されて生きていける訳がねぇ。まともな身寄りもいない今となってはな」

「……」

自分の立場をようやく理解したのか、デリブは泣くのを止め、充血した目で俺を見た。

それを確認した俺はデリブを掴んでいた手を離してやり、ポケットから一枚の紙を取り出した。

そこには一通の任務内容が記されていた。


ランク☆☆★★★2
極秘資料をS国とK国の国境付近で特派員に渡す事。


書類の内容を読んでデリブは困惑した様子だった。まだ悩んでいるのだろう。

「またあんなことになる……と言っていたな?言い方が悪いかもしれないが……もうお前に失うものなんて無い。そうだろ?」

「……ああ……いや、まだある」

俺はデリブの言っている事が分からず、首を捻った。

「……俺達の事か?」

「そうだ」

なるほど、こいつ俺達を心配しているのか。全く人のいいやつだ。

「心配すんな、いざとなったら俺がなんとかする」

俺はデリブに向けて笑って見せた。もちろん、作り笑いだが。

「……ありがとう。やってみるよ」

デリブも笑い返した。青白かった顔に少し活気が戻っている。

「任務の受注は俺がやっておいた。任務は明日だ。準備しとけ」

「分かった……あんたって意外といい人だな」

デリブの礼を背中に受けながら俺は部屋を出た。同時に俺の顔は真顔に戻った。

……哀れかな。人は希望を見つけた時、それが嘘か真かも気にせずにすがりつく。

それが希望の皮をかぶった絶望とも知らずに。

「すまないな……」

廊下で誰にも聞こえないように俺はそうひとりごちた。

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出オチ君新しいキャラが出ましたね。

うごメモ終わるらしいけど丁度受験なんでタイミングよかったというポジティブシンキングナイスポジティブ

終わったらどうするかは追って伝えます

次回の更新は3/20らへん

出すとか言ってたキャラが出る。かも。

ではノシ