A地帯

創作小説、ブロント語、その他雑記等。

The twain Swords

The twain Swords #1-epilogue

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The twain Swords #1-11

《1989/8/31 AM9:14 スイス WDO世界防衛機関本部》 赤毛の女性……もとい、世界防衛機関の総司令官、ラブ=ファイナスとの邂逅の後、未だ疲れの残るアルフォンソの様子を見たテンヌィスは、ひとまず彼を本部に一晩泊めてやることにした。 アルフォンソにはまだ…

The twain Swords #1-10

暗い海底から引き上げられる沈没船のように、アルフォンソはゆっくりと目を覚ました。 全身はほんのりと熱を持ち、餅のように柔らかいベッドが背中を包み込んでいる。天井から放たれる暖色の光は、再びアルフォンソを眠りの世界へ落そうとする。 ここがどこ…

The twain Swords #1-9

《1989/8/30 PM1:05 スイス WDO世界防衛機関本部》 「ん〜? 何だこのドア?」 しばらく進んだところで、金髪の記者はとある部屋の扉の前で立ち止まった。 彼が違和感を覚えるのも無理はない。他の部屋は全てガラス製の自動ドアだというのに、なぜか、この部…

The twain Swords #1-8

《1989/8/30 PM1:01 スイス WDO世界防衛機関本部》 登る、登る。 今の自分にできる、限られた行動。 他の記者の気配はない。既に逃げた後か、別のルートを逃げているのだろう。逃げ遅れたとは思いたくない。 電灯が点滅する中、テンヌィスの残した言葉の通り…

The twain Swords #1-7

《1989/8/30 PM0:57 スイス WDO世界防衛機関本部》 新築の廊下から響くのは銃声と荒れた足音。会議室に響くのは逃げ惑う記者達の阿鼻叫喚の声。それらがことごとく混ざり合っていて、騒音とも表現できない何かが生まれつつある。 平和を謳うはずの組織の本部…

The twain Swords #1-6

《1989/8/30 PM0:54 スイス WDO世界防衛機関本部》 「バカバカしい……いいかげんにしろ!!」 記者陣の後方にいた一人の男の記者が声を張り上げた。「超能力? 魔法? 一体ここをどこだと思っているんだ! ネットじゃあないんだぞ! そんなホラ吹き話は他所で…

The twain Swords #1-5

《1989/8/20 PM 2:47 日本・東京 某出版会社》 「君に、スイスに飛んでもらいたい」 アルフォンソが部屋に入って鍵を掛けるなり、編集長はそう切り出した。 突然の出張り命令も、アルフォンソにとってはそれほど珍しいものではない。書く記事の内容は置いて…

The twain Swords #1-4

《1989/8/20 PM 2:39 日本・東京 某出版会社》 「困るよォ〜エトワール君〜。何なんだい? この記事はぁ〜」 太った中年の男はそう言って、手元の書類から目の前にいる部下の顔に視線を移した。 間延びした独特の話し方自体には、まるで緊張感を感じさせない…

The twain Swords #1-3

《1989/8/30 PM0:49 スイス WDO世界防衛機関本部》 テンヌィスの話は、皆が期待していたものに比べると変哲も無い、至って普通のものだった。 軍事組織が成立し、国連組織になるまでの沿革、現在の大まかな人員、武器兵器の種類や数、活動内容、理念。まるで…

The twain Swords #1-2

《1989/8/30 AM11:32 スイス WDO世界防衛機関本部》 「君、ちょっと」 会見会場に向かおうとすると突然後ろから呼び止められた。 警備兵かとアルフォンソは一瞬身構えたが、振り返ると声の主は、金髪のメガネをかけた、記者の一人だった。初めて会う人物だ。…

The twain Swords #1-1

《1989/8/30 AM11:30 スイス WDO世界防衛機関本部》 WDO本部はその身をアルプスの山脈に連ねるように、その山々に身を隠すように屹立していた。 つい最近完成したばかりの、新品同然の屋舎は周りの白銀の山に溶け込むように白く、まるで中世のおとぎ話に出て…

The twain Swords #プロローグ

《11111001111 11 10111 100:111001》 荒野一面に広がる真っ赤な戦場は、修羅場というにはあまりにも静かすぎた。 夜陰の闇におぼろげに浮かぶ骸の山は、地獄絵図というにはあまりにも纏まりすぎていた。