A地帯

創作小説、ブロント語、その他雑記等。

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #25 「Spritzer④」

「遅いぞボウズ」

 突然の登場にも関わらず、エーカーはさも当たり前だというような口調でアルドロに語りかけた。
先ほど自分の命令で本部に突き返したのにもかかわらず、まるで戻ってくるのが分かっていたかのようだ。

「ルセェ、誰かさんが散々痛めつけてくれたおかげでな。まぁ、あんなのオレにはどーってことねぇが」

 ふんぞり返ってみせるアルドロだが、見るからにフラフラしている。持ち前の気力でかろうじて立っているのだろう。

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アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #24 「Spritzer③」

 セントフィナスの広場前に、大きな高台がある。

 石造りだというのに表面は白くて隆起がなく、無骨さの欠片も感じさせられない。気品溢れるセントフィナス中心部の街並みにすっかり溶け込んでいる。

 十数年前、建国記念に建立されたソレは、セントフィナス中の景色を一望できる程の高さだ。

 外に取り付けられた木造の階段は海風で風化しており、つい最近撤去されたため、登れれば、の話ではあるが。

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アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #23 「Spritzer②」

「までゴラァ!」

 王女を抱え、長い廊下を走り去ろうとするユーリを、エレクは追う。

 エレクの持ち前の脚力なら簡単に追いつけるはずだが、ユーリが精製した鴉を薙ぎ払いながら追っているため、なかなか手が届かない。電撃射程内の距離に食い止まるのが精一杯だ。

 電撃を飛ばそうとも思ったが、彼の抱えている王女にも怪我を負わせかねない。
 命中させる自信はあるが、弱い威力で撃っても効果はないだろう。かと言って強い威力で撃てば、王女が黒焦げになる。

 こういう人質がらみの仕事をエレクは得意としない。能力のせいもあるが、先手必勝一撃必殺の戦闘スタイルがあっていないのだ。
 正確さとか慎重さとかいった分野にはレイドの方が向いているが、あいにく相棒は別の相手で手一杯である。ここは一人で乗り切る他ない。

 どうにかして二人を引き離し、ユーリだけを攻撃せねばなるまい。

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