A地帯

創作小説、ブロント語、その他雑記等。

アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #22 「Spritzer①」

 ヘリから勢い良く飛び出したレジーは、全身に法力を展開して空中制御と衝撃吸収を同時に行ない、コンクリートの地面に難なく着地した。

 瞬時に拳銃を構え、周りを確認する。空港の滑走路上に、不審な人影はない。
 周囲が安全であることを確認したレジーは手を挙げてヘリに合図を出した。
 ヘリが地面に近づくと、続いてデルタ、イクス、エーカーの順にヘリから飛び降りる。
 

 セントフィナスの地。
 本来なら王女を伴い、何事も無く踏みしめる筈だった地面。

 しかし男達は悔いもせず、ただ淡々と自らが果たすべき任務——王女の奪還と黒幕であるユーリ・マルケロフの抹殺——を遂行するため、地面を踏みしめ、歩を進める。

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アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #21 「Corpse Reviver No.2」

「………………」

 ヘリに乗ってから、アルドロはずっと押し黙ったままだった。

 ヘリの中には、アルドロを招き入れた白髪紅眼で黒コートの男、先ほど機関銃を掃射してきた茶色の癖毛の髪の男、ヘリの操縦をしている男、そしてアルドロの計4人が同乗している。

 見たことも会ったこともない男ばかりだ。

 まずナイツロードの車を襲撃してきた時点で、この者達がナイツロードの同僚や味方でないことは確かだ。
 だが、だからと言って、ボンゴやアリーサと同じ憲兵というわけでもないらしい。完全なるアルドロの敵なら、アルドロをセントフィナスに連れて行く理由など、どこにもないハズだ。

 では、この男達は一体何者なのだろうか。

 色々な可能性を模索するアルドロだったが、所詮、一団員の知識では答えに辿り着けるわけもない。その上、アルドロは頭を使うということが大の苦手だ。

 コンマ数秒で思考を停止したアルドロは、目の前の男から何か情報を得れないかと、コートの男に視線を向ける。

 コートの男は無表情で腕組みをし、座席に腰掛けている。アルドロに搭乗を促してから彼は一言も喋っていないが、その存在感は他の二人の同乗者よりも遥かに大きかった。

 ……多分、この中でこいつが一番偉い奴に違いない。

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アンジャスト・ナイツ2/Black Embrace #20 「Fallen Angel⑥」

 意識を取り戻したアルドロを襲ったのは、エーカーの容赦ない拳だった。

 顔面を殴られ再度意識を失いかけるアルドロを、エーカーは喉元を踏みつけることによって無理矢理叩き起こす。

「ゲっ……ガハッ……!」

 エーカーの足を掴んで、満足に呼吸ができないことを表すアルドロ。しかしエーカーはその足を緩めるどころか、さらにキツく踏みつけ、状況を端的に説明した。

「オリガがユーリに連れ去られた。恐らく、目的地はセントフィナス王国だ。王女を民衆の前で殺害し、復讐を果たす算段だろう」

 王女の身柄を敵に奪われる——今作戦において、考えうる中でも最悪の状況だ。あらかじめ計画した護衛ルートも完全に御破算。もはや彼らにできることと言えば、セントフィナスに到着するまで、ユーリがオリガを殺さないことを祈りつつ、彼らを追跡することだけである。
 不意にアルドロを踏んづけていた足を離して、エーカーは無表情を崩さぬまま、冷厳に告げた。

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